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東京高等裁判所 昭和31年(ネ)2638号 判決

結城信用金庫

事実

被控訴人(一審原告、勝訴)結城信用金庫は請求原因として、被控訴金庫は昭和二十五年五月二十日控訴人梅山繁次に対して金二十万円を返済期昭和二十六年三月三十一日、利息百円について日歩四銭の定で、貸し付けたが、控訴人は返済期が到来しても右貸付金の返済をしないから、右金員及びこれに対する利息の支払を求めると述べた。

控訴人梅山繁次は被控訴人主張の事実を否認し、仮りに控訴人が被控訴金庫に対して被控訴人主張のような債務を負担したとしても、昭和二十六年七月中旬梅山辰四郎と被控訴人との間に、四十九年式ニツサン貨物自動車一輛を右債務の代物弁済としてその所有権譲渡をなすべき旨の契約が成立し、これを引き渡したので、右債務はここに消滅したものであると述べた。

理由

被控訴人結城信用金庫がその主張のように金二十万円を控訴人梅山繁次に貸与したか否かを審査するのに、証拠を総合すれば、控訴人の叔父梅山辰四郎は昭和二十一年六月頃満洲から引き揚げ、下館市において興洋産業株式会社という商号の株式会社を組織して運送業を営んでいたが、昭和二十五年五、六月頃坂入建設工業株式会社からニツサン貨物自動車一台を買い入れるためその資金を必要としたが、当時被控訴金庫には既に相当額の債務を負担しており、自己名義を以つて借入をすることができなかつた関係上控訴人名義で借入をしようとし、控訴人に対してその承諾を求めたところ拒絶された。それにも拘らず右梅山辰四郎は控訴人名義を以つて被控訴金庫に金二十万円の借受方の申込をなし、その借用金証書には自ら控訴人の氏名表示と異なる「梅山繁治」という署名を代署し、自己が前から使用していた印章をその名下に押捺しなお前記自動車を右借受債務の担保として差し入れる旨の保証品差入証書を作成し、これに右同様の署名捺印をなし、恰かも控訴人が真実被控訴金庫から金二十万円を借り受けるような外形の下に被控訴金庫から金二十万円の交付を受けたのであつて、控訴人と被控訴金庫との間に被控訴金庫主張のような消費貸借契約が成立したものではないことが認められる。

してみると、控訴人と被控訴金庫との間に右消費貸借が成立したことを前提とする被控訴金庫の本訴請求は他の諸点を審査するまでもなく失当であり、これと異なる趣旨に出でた原判決も失当であるとしてこれを取り消し、被控訴人の請求を棄却した。

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